
チュークは、世界中のダイバーが一度は潜ってみたいと憧れる“沈船の聖地”です。
ミクロネシア連邦の中心に位置し、かつて「トラック諸島」と呼ばれたこの海域には、第二次世界大戦中に沈んだ大小60隻以上の艦船や航空機が眠っています。
しかし、その美しさの裏には、深度や流れ、減圧など上級者向けの知識が求められる一面もあります。
この記事では、上級者やテクニカルダイバーだけでなく、レクリエーション範囲で安全に楽しみたい中級者にも役立つように、安全性・シーズン・装備・滞在情報をわかりやすく整理しました。
初めての遠征でも安心してチュークを満喫できるよう、実際のダイブ体験や現地情報を交えながら、沈船の魅力とその楽しみ方を解説していきます。
Contents
チューク ダイビングとは 沈船の聖地を探る
チューク ダイビングの歴史と成り立ち
結論から言うと、チュークは“世界で最も保存状態の良い沈船が集まる場所”です。
その理由は、1944年に起こった「トラック大空襲」。このとき日本海軍の艦船や輸送船が次々と沈められ、現在でもそのままの姿で海底に眠っています。
実際に潜ると、艦橋や魚雷発射管、戦闘機の翼、医療器具までそのまま残されており、まるで“時が止まった水中博物館”のようです。
多くの沈船は水深30〜40mにあり、レクリエーション範囲でも潜れるポイントが多いのが特徴です。ダイビングポイント希望を出すのであれば、テクニカルダイビングのスキルは必要です。
このため、チュークは単なる沈船スポットではなく、「歴史を潜る」体験ができる数少ないダイビングエリアとして世界中のダイバーを惹きつけています。
チューク ダイビングが世界の沈船メッカと呼ばれる理由は?
チュークが“沈船の聖地”と呼ばれるのには3つの理由があります。
- 沈船の数と多様さ。
戦艦・輸送船・潜水艦・飛行機など、実に多種多様な沈没船がラグーン内に集中しています。
しかも、浅い場所からディープゾーンまで深度差があり、スキルに応じたダイブプランを組みやすいのも特徴です。 - 海況の安定性。
チュークは外洋から環礁に守られているため、波が穏やかで流れも弱い日が多いです。
初心者がドリフトダイブを避けたい場合でも、比較的穏やかな環境で沈船を楽しめます。ポイントまでも近いところは、15分程度です。 - 保存状態の良さ。
ラグーン内の沈船は、80年近く経った今も船体が美しく残っています。
船体を覆うソフトコーラルやカラフルなハナダイの群れが光に照らされると、戦争遺跡とは思えないほど幻想的な光景が広がります。
結果として、チュークは「歴史×自然×冒険」が融合した、他にない“ストーリーダイブ”の舞台になっているのです。
見逃せない沈船ポイント(富士川丸・乾祥丸・桑港丸など)
代表的な3つのレックダイブを紹介します。
富士川丸(Fujikawa Maru)
最も有名な沈船で、船体全長132m。貨物室には戦闘機「零戦」や弾薬箱がそのまま残っています。
船首にはソフトコーラルが咲き誇り、光が差し込む瞬間はまさに“チュークの象徴”。レクリエーション範囲(約30m)で潜れる人気ポイントです。
また、映画タイタニックのラストシーンでも使用された船内の様子が残っています。

乾祥丸(Kansho Maru)
全長137mの大型輸送船で、現在はラグーン内の穏やかな場所に沈んでいます。
内部は比較的開放的で、エンジンルームや操舵室、船倉などが良好な状態で残っています。船内にはトラックのエンジンや工具、作業機材などが散在し、まるで当時の作業風景が凍結したかのよう。
外観にはカラフルなソフトコーラルやウミウシなどの生物も多く、沈船とマクロ両方を楽しめる点も魅力。
深度はおおむね15〜33mで、中級〜上級レクリエーションダイバーでも十分に探索可能です。沈船初心者のステップアップにも最適なポイントとされています。

桑港丸(San Francisco Maru)
「沈船の女王」と称される、チュークを代表する大型貨物船。船体全長117m。
第二次世界大戦時、弾薬や戦車、機雷、トラックなどを満載したまま沈没しました。甲板上には日本陸軍の九五式軽戦車(HA-GO)が今も姿を残し、世界的にも貴重な水中遺産として知られています。
水深は約40m〜65mに位置し、船首の主砲や積載車両群を目にすることができます。
その圧倒的な保存状態とスケール感から「チュークのハイライト」と評されますが、深度が深く減圧管理が必須のため、上級〜テクニカルダイバー向けです。

チューク ダイビングのベストシーズンと海況
チュークでは一年を通してダイビングが楽しめますが、海況や透明度は季節によって大きく変わります。
せっかく行くなら、ベストな時期に潜りたいと思うのがダイバーの本音でしょう。
ここでは、季節ごとの特徴や潜水計画を立てる際の注意点をまとめます。
季節・水温・透明度から見るベストシーズン
結論から言えば、チュークのベストシーズンは12月〜4月です。
この時期は乾季にあたり、雨が少なく透明度が高く、ラグーン全体が穏やかになります。
平均水温は約28〜30℃。ウェットスーツは3mm程度で快適に潜れます。
透明度は30mを超える日もあり、沈船全体を見渡せるほどのクリアさです。
一方、5月〜11月は雨季に入り、スコールやうねりの日も増えます。
ただし、ラグーン内は外洋に比べて穏やかなので、ダイビングが中止になることは少ないです。
雨季は観光客が減るため、混雑を避けて沈船をじっくり撮影したい人には狙い目のシーズンでもあります。
低気圧ができやすいエリアでもあるので、時に雲の流れは早いです。

潮流・天候による影響
チュークは環礁に囲まれており、外洋の影響を受けにくい構造です。
そのため、基本的に波は穏やかですが、風向きによって潜るポイントを変えるのが一般的です。
現地ガイドはその日の風と潮を見て、安全かつ快適なポイントを選定してくれます。
出発前に「どのエリアに行くか」よりも、「その日の海況に合わせる柔軟さ」が重要です。
乾季は太陽光が強く、水中の光の差し込みが美しい季節。沈船内部に差し込む光が幻想的で、フォト派に最適です。
一方、雨季はプランクトンが増え、魚影が濃くなる傾向があります。
ただし、スコールが増えるため、移動中のボートは防水対策を万全にしましょう。
また、雷雨の日は安全確保のためボートダイブが制限される場合もあります。
チューク ダイビングを体験する(上級者・テクニカル向け)
チュークは、世界的にも珍しい「歴史を潜る」海です。
その一方で、深度30mを超える沈船やペネトレーションを含むダイブが多く、正しい知識と安全意識が欠かせません。
ここでは、テクニカル寄りのダイバーがどのように準備し、どんな心構えで潜っているのかを整理します。
ペネトレーション潜水と安全管理の基礎
結論から言うと、沈船内部に入るペネトレーションダイブは「光が届く範囲内で行う」のが鉄則です。
なぜなら、チュークの沈船内部は構造が複雑で、泥が舞い上がると視界ゼロになるためです。
減圧ダイビングの手順とガス構成例
チュークでは水深40〜60m前後の沈船もあります。減圧不要範囲(NDL)を超えることもあります。
テクニカルダイバーは、減圧シリンダーを持って安全マージンを確保します。

一方、レクリエーションダイバーは減圧を起こさない潜水時間管理を徹底すれば安全に楽しめます。
チューク ダイビングを楽しむ(レクリエーションダイビング向け)
チュークと聞くと「上級者の海」という印象を持つ人もいますが、実際はレクリエーション範囲でも楽しめるポイントが多数あります。
ここでは、減圧を避け、安全に沈船を満喫するための基本をまとめます。
減圧を起こさない潜水の基本
結論から言えば、「NDL(無減圧限界時間)」を守ることが最大の安全策です。
チュークの沈船は深くても30〜35m前後が多く、NDL内に収まる潜水計画を立てやすいのが特徴です。
潜降はゆっくり、上昇は1分あたり9m以内、最後に5mで3分間の安全停止を必ず行いましょう。
これを守るだけで、体への窒素蓄積を大きく減らせます。
ダイビングコンピューターの見方と設定方法
チュークでは1日に3ダイブするケースが多いため、ダイコン(ダイブコンピューター)の理解が不可欠です。
画面上の「NDL(無減圧限界)」「ASC(浮上時間)」「CNS(酸素中枢神経毒性)」を確認し、数値が上限に近づいたら早めに上昇を開始しましょう。
特に2〜3本目のダイブでは前の窒素負荷が残るため、1本目より短めに設定するのが理想です。
無減圧潜水範囲で楽しめる沈船ポイント
浅場で人気のレックポイントとして「彩雲」「平安丸」があります。
どれも水深25〜30m前後で、レクリエーションダイバーでも十分楽しめます。
光が差し込む甲板やサンゴに覆われた船首は、写真映え抜群です。


チューク ダイビングに必要なスキルと装備
チュークを快適に潜るためには、装備とスキルの両方を整える必要があります。
特別な器材が必要というよりも、「自分の装備を理解して使いこなすこと」が大切です。
推奨ライセンスと経験本数
AOW(アドバンスドオープンウォーター)以上、最低50本以上の経験があれば問題ありません。
ただし、30m以深の沈船を目指すならディープSPを取得しておくと安心です。
装備チェックリスト
基本セットに加え、水中ライト・SMB(シグナルフロート)は必携です。
チュークの沈船は内部が暗い箇所もあり、ライトがあれば安全性と視界が大きく向上します。
減圧不要潜水での装備工夫
レクリエーションダイバーの場合、器材をできるだけ軽量化するのがポイントです。
BCDに不要なアクセサリーを付けすぎると浮力バランスが崩れるため、必要最低限に絞りましょう。
安全マージンを確保するブリーフィング
潜水前のブリーフィングで「最大深度・NDL・エア切り上げ圧」を確認するだけでも安全性が格段に上がります。
特にグループ潜水では、最もスキルの低い人に合わせる意識を忘れずに。
チューク ダイビングツアーとアクセス情報
チュークへは直行便がないため、グアム経由でアクセスします。
乗り継ぎ時間や滞在先選びを工夫すれば、快適に遠征できます。
ちなみに奇跡の島と呼ばれる「ジープ島」もチュークから船50分の場所に位置します。

日本からの行き方
東京(成田・羽田)・大阪(関空)からグアム経由で約8〜9時間。
グアムからチュークまではユナイテッド航空で約1時間半です。
乗り継ぎ時間を含め、片道およそ12時間前後を見込んでおくと安心です。
現地ショップとリゾート
主要ダイブリゾートは「ブルーラグーンリゾート」、ショップは「TREASURES」様を利用することになります。
桟橋からボート出航が可能で、1日3ダイブのスタイルが一般的です。
※テクニカルダイビングは1日2本
ショップにはナイトロックスやレンタル器材も完備されています。

滞在と食事情報
ホテルのブルーラグーンは緑に囲まれた静かな環境で、
部屋からヤシの木と海が一望できます。
食事はいわゆる海外食ですが、親日国家ということもあってカツ丼や焼きそばもあります。


最終日のため、お酒を飲んでいます
器材輸送と税関
メッシュバックにダイビング器材、スーツケースにレギュレーターや着替え。リュックにカメラや壊れやすいもの。
昨今モバイルバッテリーの発火が多いので、電池付きライトやカメラは機内持ち込みです。乗り継ぎがあるので、歯ブラシなどの衛生用品も。
確実に重量オーバーになるので、事前に超過分の支払いや、マイルのステータスがあると便利です。
グアムの税関は、WEBで完結。(行き・帰りお忘れなく)
チュークは、機内で渡されますので、手書きで入力が必要です。参考記事

現地通信と安全情報
Wi-Fiはホテルで利用可能ですが、電波は弱め。
緊急連絡先は事前にショップと共有しておくことが大切です。
部屋の施錠はマスト。夜間の外出を控えれば安心して過ごせます。

チューク ダイビングの費用とモデルプラン
平均的な旅費は7日間で40〜50万円前後です。
内訳は航空券20万円前後、宿泊+ダイブパッケージで20〜50万円。
※レクリエーションダイビングの場合
モデルプラン(5日間)
1日目:出発〜グアム経由〜チューク到着
2日目:チェックダイブ
3・4日目:2〜3ダイブ
5日目:フライト前日休養〜帰国
ただし、グアム・チュークは毎日運行していないので注意。
チュークは経由地となるため、途中降車です。
稀なケースだそうですが、機材トラブルで運行できず、ホテルの空きもなかったため、空港に8時間箱付め。グアムから迎えの飛行機が来るという滅多にない体験をしました。もちろん、乗り継ぎはキャンセルでフライトの組み直しでです。

宿泊ホテルと街事情
今回宿泊したホテルは、ブルーラグーンリゾート。TREASURES様がホテルの予約代行を行ってくれました。おそらく、予約サイトから予約できないレベルです。

ホテルから街まで5km程度。道路も舗装されておらず、ホテルにはゲートがあるので治安は良いとは言えず、おとなしくホテルで過ごしました。レストランも少ないです。


チューク ダイビングで得られる体験価値
チュークの沈船は、ただの観光ではありません。
80年以上前の歴史を、自分の身体で体感する“時間旅行”のような体験です。
透明度の高いラグーンの中で、鉄の船体に差し込む光。
その美しさは、戦争という過去を超えて、人間の営みと自然の再生を感じさせます。
沈船の周りには魚が群れ、生命の循環を象徴するようです。

また、深場での浮遊感や、静寂の中に響く自分の呼吸音は、
都市生活では味わえない“心のリセット”の時間になります。
よくある質問(Q&A)
Q1:チュークは初心者でも潜れますか?
→ はい。水深25m以内の沈船が多数あり、日本人ガイドのサポートも充実しています。
Q2:減圧を避けるには?
→ ダイコンのNDLを守り、浅場での安全停止を徹底しましょう。
Q3:健康や保険の注意点は?
→ ダイバー保険(減圧症・搬送対応)は必須。耳抜きに不安がある場合は事前検査を。
Q4:撮影機材は?
→ ハウジング付きカメラ、GoProが人気。沈船内部はライトを使用すると劇的に映えます。
まとめ
チュークは、ミクロネシアに眠る“水中の記憶”です。
沈船を通して感じるのは、戦争の悲劇よりも、時間を超えた海の包容力。
初めて訪れる人も、何度潜っても、そこには新しい発見があります。
安全に、そして丁寧に潜れば、チュークの海はあなたの人生に深い余韻を残してくれます。
次のダイブトリップで、ぜひこの“静寂の聖地”を体験してみてください。